“もしも”の前にできること。リフォームで叶える、暮らしと相続のダブル備え #column

「まだまだ元気だから大丈夫」——親世代がそう言っていても、相続のことが少しずつ気になってくる年頃。親の家、どうする?兄弟との分け方は?相続税って高いって聞くけど…?

そんな“ぼんやり不安”に、ひとつのヒントになるのが「相続前のリフォーム」。実はこれ、住みやすさアップだけでなく、相続税の対策としてもメリットがあるかもしれないのです。

この記事では、相続とリフォームがどんなふうに関係するのか、節税につながるパターンとその注意点について、やさしく解説していきます。

この記事を読めばわかること

  • 相続税と不動産評価の基本的な関係
  • 節税につながるリフォームと、そうでないリフォームの違い
  • リフォーム費用と“相続財産”の扱い
  • トラブルになりやすい贈与との違い
  • 相続前にやっておきたい具体的な準備ステップ

相続税は「遺産総額」しだい。不動産の影響は想像以上に大きい

相続税は、「亡くなった人が残した財産の総額」から基礎控除を引いた金額に対してかかる税金です。

【基礎控除の計算式】 3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

この控除額を超えると、相続税が発生します。

ここで問題になるのが「不動産の価値の判断」。

現金や預貯金と違い、不動産は価値の評価に幅があります。築年数が古くなっている家ほど「これはそんなに価値ないよね?」と感覚的に思ってしまいがちですが、税務上の評価とは別問題。

土地の面積、立地、建物の構造などによって評価は変わり、思っていた以上の額になることも。こうしたギャップが、後のトラブルや想定外の納税負担につながるケースも少なくありません。

「建物の評価額」ってどう決まる?減価償却との関係

相続税の計算で使われる建物の評価額は、「市場での売買価格」ではなく「固定資産税評価額」によって決まります。

この評価額は、建物の構造や築年数に応じて、時間の経過とともに減っていく「減価償却」が考慮されるのが特徴です。

たとえば:

  • 築20年の木造住宅 → 評価額はかなり下がっている可能性あり
  • RC造(鉄筋コンクリート)住宅 → 耐用年数が長く、比較的評価額が高めに残る傾向

つまり、「古い家だから相続税が高くなるのでは?」という心配はあまり必要ありません。

ただし——その家、リフォームすることで“評価が上がる”可能性もあるのです。

節税になる?ならない?リフォームの内容による“境界線”

では本題。リフォームが相続税にどう影響するのか?ここはポイントをしっかり押さえておきたいところです。

【評価額に影響しにくい=節税効果があるケース】

  • 古くなった設備の交換(キッチン・お風呂など)
  • 外壁・屋根の修繕や塗装などのメンテナンス工事
  • バリアフリーや断熱向上などの改修

→ これらは“元の状態に戻す”ためのリフォームと見なされ、固定資産税評価額に大きな変化はありません。

【評価額が上がる=節税効果に注意が必要なケース】

  • 増築(延床面積が増える)
  • 高級素材やハイグレードな仕様に変える大規模改修
  • 太陽光発電や蓄電池など、新たな機能を追加する設備工事

→ これらは建物の価値を“上乗せ”すると見なされ、評価額アップ→相続税の対象額が増える可能性があります。

つまり、「リフォームすれば節税できる」というのは半分正解で、半分は誤解。内容によって節税になるものと、逆効果になるものがあるんです。

white and black kitchen cabinet

リフォーム費用は“財産から差し引ける”?という考え方

リフォームにかかったお金は、そのまま相続財産から減らせる——という見方もできます。

たとえば、親が自分の預貯金を使ってリフォームした場合:

  • 預貯金が減る → 相続財産の中の現金が少なくなる
  • かつ、建物の評価額が変わらないリフォームなら、建物価値は据え置き

結果として、“相続時の財産総額”が減ることに。

ただし、注意点もあります:

  • 工事内容や金額が“常識的な範囲”にあること
  • あからさまな節税目的だと、税務署に否認される可能性も

費用対効果とリスクのバランスをとるには、専門家のサポートが必要です。

「贈与」になってしまうケースに注意。名義とお金の流れがカギ

親の家を子どもがリフォーム。その費用も子どもが負担——このパターン、実は税務上“贈与”と見なされる可能性があります。

【贈与と見なされると…】

  • 年間110万円を超える贈与には申告義務が発生
  • タイミングや金額によっては、贈与税がかかる

また逆に、親がリフォーム費用を出して、のちのち「これで子に財産を残したつもりだった」と主張しても、それも贈与と見なされるケースがあります。

“相続”と“贈与”の境目はとてもグレー。判断に迷ったら、必ず税理士などの専門家に相談しましょう。

相続にそなえて、今からできる3ステップ

何か起きてからバタバタするよりも、準備しておくことが大切です。

【ステップ1】 家の状態を知る

  • 築年数、構造、面積などを把握
  • 固定資産税評価証明書を取り寄せておく

【ステップ2】 リフォームの目的を整理する

  • 住みやすさ重視? 節税狙い?
  • 改修が必要な場所を洗い出し、優先順位を決める

【ステップ3】 専門家に相談する

  • 税理士、不動産鑑定士、FPなどへ早めにアプローチ
  • 補助金や優遇制度が使えるかも確認

まとめ

リフォームは、住まいを快適にするだけでなく、相続税対策という側面からも有効な一手になることがあります。ただし、工事内容や費用の出どころによっては、むしろ逆効果になることも。

「よかれと思ってやったこと」が、あとから大きな問題にならないように。

家族でしっかり話し合い、プロの知恵を借りながら、未来に備えていきましょう。

住宅展示場では、こうした相続やリフォームに関する相談会や情報展示が開催されていることもあります。暮らしと資産を次世代へつなぐ準備として、まずはできることから動いてみませんか?